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「読めるか?」
「はい、なんとか…」
くだらない経緯を抜きにすぱっと説明してしまうと、僕と所長は遺跡の発掘をしている。世界が灰になってからもう二十年。偶然生き残った数少ない人類は、かつての技術を取り戻す術もなく、かといって遠い昔のように、獣として生きていくこともできなかった。二十年前には十分な余裕があるように思えた非常食も、近いうちに底をつく。一言で言えば、絶望的というやつだ。
「どうだ。なんて書いてある」
「えぇと」
「……」
「外れ…ですかね、これは」
二十年前のあの爆発は、どうやらとんでもない破壊力だったらしく、かなりの深さまで地面をえぐった。そんな爆発の中、僕らがどうやって生き延びたかのかと疑問に思うかもしれない。しかし、その理由は語らない。偶然と奇跡が一割、人間の弱さが九割、ただそれだけ。強い人間は真っ先に死んでしまった。
そして生き残った弱い僕らは、深く深くえぐられた地面の底から出てきた古文書に、心を奪われた。といっても、それを読めたのは、暇つぶしに大昔の日本語を研究していた僕だけだ。所長も少しくらいなら読めないこともないのだが、研究価値がないのであまり勉強しなかったらしい。
僕はその絵付きの古文書を訳して、みなに聞かせた。みなはもう、精神的に限界だったのだろう。彼らはそれをむさぼるように読み漁り、心から信じ切った。いつしか、古文書は予言書と呼ばれるようになり、それを読める僕は預言者になった。実際は面倒なので、僕は古文書を訳すだけで、預言者役は所長にやってもらっているのだけれど。
「何か深い意味があるのかもしれん。一応読んでみろ」
「はぁ…それが」
「なんだ」
「豚のような生き物が、『ブルマのパンティーおくれ』、と」
「…外れだな」
「でしょうね」
七つの玉を集めると願いが叶う。最初に発見された古文書には、そう書かれていた。古代神話というヤツだ。古文書というほどの価値はないし、予言書でなどあるはずがない。しかし、希望になってしまった。生き残った人類の、希望になってしまったのだ。希望があれば、僕らはまた立ち上がることができるかもしれない。だから僕は、うさんくさいと思いながらも古文書を掘り出し、それをみんなに聞かせている。
「しかし、よくわからんな。神話めいた内容があったかと思えば、突然俗な内容も出てくる。妙な予言書だ。あれなんか絶対に発表できんな、ぱふぱふ、とやらは」
「大事から小事まで、ってことなんですかね。ずいぶんと親切な予言書です」
「親切、か…と、おい、これは?」
「あ、これもそうですね」
「読めるか?」
「はい。ええと…『鳥山明先生の作品が読めるのはジャンプだけ』、です」
「ああ…例のアレか。しょっちゅう出てくる」
「そうですね。こんなに頻繁に書かれているということは、何か重大なことなのかもしれません。発表予定の中に組み込んでおきますか?」
「そうだな。みなで話し合えば、何かしらの解釈もできるかもしれん」
鳥山明先生の作品が読めるのはジャンプだけ。なんだか、頭に、心に残るフレーズだ。発表したら、これが僕らのスローガンになるかもしれない。僕は、想像してみた。僕らがなんとか希望を失わず、このスローガンと共に生き抜いている未来を。絶対者がつぶやく。鳥山明先生の作品が読めるのは? 聴衆がそろって答える。ジャンプだけ、と。
「…悪くないかもな」
「ん? 何か言ったか?」
「いいえ、所長。そろそろ戻りましょう」
「そうだな」
さっきまでよりも、ほんの少しだけ強い足取りで、僕は歩き出した。
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